名古屋埠頭事件


名古屋埠頭事件
名古屋地方裁判所判決 平成2年4月27日

判例タイムズ738号100頁

一、Xは、昭和36年2月6日港湾荷役業務を営むYによって雇用され、主にクレーンの運転業務に従事してきた。
Xは、昭和42年4月腰痛症(第1次腰痛症)となり、昭和43年1月31日から同年6月7日まで休業し、同年6月8日職場復帰したが、昭和44年1月31日作業中再び腰痛症(第2次腰痛症)となり、同年2月1日から昭和46年7月15日まで、昭和48年2月21日から昭和50年9月15日まで、昭和52年12月15日から昭和53年2月18日まで、昭和54年7月9日から昭和58年3月10日まで休業した。
そこで、Yは、昭和59年3月31日をもってXを解雇した。
Xは、解雇の効力を争って従業員たる地位の確認、賃金の支払を求めるとともに、第1次腰痛症はYが健康管理及び作業量、作業時間、作業密度等の労働条件に配慮すべき義務に違反したために生じたものであり、第2次腰痛症はYが第1次腰痛症を労災と認めず、職場復帰の際フルタイム復帰させ、Xの腰痛症状や労働条件等について配慮しなかったことによって生じたものである旨主張し、安全配慮義務違反を理由に後遺障害による逸失利益等約1800万円の損害賠償を求めた。
Yは、Xの腰痛症やその他多数の私傷病は就業規則所定の精神若しくは身体に故障あるか又は虚弱老衰若しくは疾病のため業務に堪えないと認めたときに当たり、休業後の職場復帰訓練の際のXの自由気ままな態度は使用者の経営秩序、職場の規律を乱し、労使間、労働者間の信頼関係を破壊するものであるから同所定の已むを得ない業務上の都合によるときに当たり、更に同所定のこれらに準ずる已むを得ない事由のあるときに当たるとして就業規則所定の解雇事由の存在を主張した。
またYは、クレーンの導入、改良及び作業体制について最善の努力をし安全配慮義務を尽くしていることなどを主張して損害賠償請求を争った。
これに対しXは、Y主張の解雇事由の存在を争うとともに治癒前のXを解雇することは労働基準法19条1項に違反し無効であるなどと主張した。
 二、本判決は、業務に堪えないという場合の業務とは雇用契約で職種が限定されている場合でもその業務に限られず、使用者が就労を命じうることが可能な業務を含むが、疾病の内容・特質、罹患後の長さ、復帰後の就労状況などに照らして従業員が解雇当時就労可能な業務についたとしても最終的に当初の限定された職種に復帰することが困難であることが高度の蓋然性をもって予測できるときは解雇は有効であるとしたうえ、Xの腰痛症は難治性のものであってクレーン運転業務の作業実態に照らすとその業務に復帰することは困難であり、Xは解雇当時就業規則所定の身体の故障又は疾病のため業務に堪えないと認めたときに当たるとした。
そしてこの判断はXを種々の職種につかせたうえでなければできないものではないし、症状固定(Xは昭和58年3月10日)により再就職の可能性のそれ以上の回復は期待できなくなったのであるから、症状固定時以降労働基準法19条1項の解雇制限は適用されず、Yの解雇は有効であるとした。
 しかし、本判決は、損害賠償請求については、YはXの腰痛症の発生を防止するため作業取扱量、作業時間、作業密度等の労働条件に配慮し、クレーンの改良等に努め、更に職場復帰したXの病勢が増悪することのないように措置すべき義務があったのに、これを怠ったため第1次、第2次腰痛症をもたらしたものであるとして、Yに約金600万円の損害賠償義務を認めた。
 三、精神又は身体の疾病や障害に起因する不適格者を排除するため就業規則で精神又は身体の障害により業務に堪えられない場合は解雇できる旨規定することが多く、その場合業務の内容や解雇権の濫用が問題となる。
本判決と同様業務とは雇用契約上就労すべきであるとされている業務のみならず、使用者が契約上従業員に就業を命ずることが可能な業務を含むとした裁判例として横浜地横須賀支決昭55・6・18労判345号49頁、新潟地判昭54・12・24労旬993号84頁がある。
もっとも本判決は本来の業務への復帰可能性を問題としている点が注目される。
就業規則のかかる条項が適用されて解雇されたもののうち、解雇が有効とされた裁判例として、東京高判昭52・11・22労判290号47頁、長野地伊那支判昭53・12・6労判311号49頁、大阪地決昭54・10・9労判329号41頁、上記横浜地横須賀支決昭55・6・18、東京高決昭55・12・3判時997号157頁(右抗告審)、札幌地決昭58・12・15労経速1264号7頁がある。
使用者の安全配慮義務に関しては最3小判昭50・2・25民集29巻2号143頁がある。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>