高知放送事件


高知放送事件

最高裁判所第2小法廷 昭和52年1月31日 判決/昭和49年(オ)第165号

労働判例268号17頁

本件は、宿直勤務の際、二度にわたって寝過ごし、六時からの定時ラジオニュースを各々一〇分、五分放送することができなかったアナウンサーに対する解雇の効力が争われたものである。
本件については、仮処分請求に関し、すでに最高裁まで争われ、いずれも解雇無効の判断が示されており(高知地判昭43・12・8、高松高判昭43・7・16、最一小判昭46・3・4労経速七四三)、本訴請求である本件に関しても、一審(高知地判昭48・3・27)二審(高松高判昭48・12・19労判一九二)ともに同様の判断を下している。したがって、結論自体はすでに予想されたとおりのものというべく、むしろ、あえてこの程度の事件を再び最高裁まで争った会社側の姿勢の妥当性が、労使関係ないし労務政策のあり方にかかわって、問い直されるべき性格の事件であったといえよう。
このように、本判決の結論はすでに予想されたとおりのものであったわけであるが、理論上の問題としていえば、いわゆる懲戒解雇の普通解雇への転換、ということに関する論理ということになるであろう。すなわち、従来から、懲戒解雇事由に該当するが諸般の事情を考慮して普通解雇に処するとして解雇が行なわれた場合、かかる転換が許されるのか、許されるとして、それは懲戒解雇事由該当性を問うべきか、普通解雇事由を基準とすべきかが争われていたわけであるが、従来の下級審判例は、それが許容されることは等しく承認ルつつも、しかし、「通常解雇の方法をとる場合においても、解雇の理由とされる行為自体は懲戒解雇事由に該当するのでなければならない」(一草会事件名古屋地判昭37・11・5)とする考え方が多数をなしていたのに対し、本判決はその場合も普通解雇の要件を備えていれば足りるとしたからである。
もっとも、その根拠は明らかではない。常識的に考えれば、就業規則の懲戒解雇事由に該当するがゆえに解雇する、というのであれば、その懲戒解雇事由に該当するか否かだけを判断すれば足りるし、そこまでが裁判所の権限となりはしないか。本件の場合、解雇は服務規律違反、職務怠慢、業務上の事故、虚偽届出等の懲戒事由該当を理由になされているのであって、普通解雇事由該当を理由としているわけではない。それをあえて裁判所が就業規則一五条をひき出してくるのはなぜか(なお本件行為を同三号該当とするのはややムリな解釈と思われる)、疑問の残るところというべきであろう(なお、仮処分、本訴いずれの下級審判決もこの点に関して定かなものを示しておらず、解雇権濫用をいうのみである)。

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