興和事件


興和事件

大阪地方裁判所決定 平成10年1月5日

労働判例732号49頁

(1) 本件は、業務請負契約に基づき自社の従業員を派遣先会社に運転手として派遣していた会社が、右業務請負契約の解約に伴い業務を縮小せざるを得ないことを理由に八名の従業員に解雇予告を行ったことに対し、被解雇者のうちの一名が解雇を無効として、地位保全及び賃金、賞与等の支払いを求める仮処分を請求したものである。
本決定は、本件解雇の必要性は認めたものの、解雇回避努力、被解雇者選定基準の設定、被解雇者への説明の三点については整理解雇の要件が充足されていないとして解雇を無効とするとともに、地位保全の仮処分の必要性を肯定している。
なお、賃金については、基本給の月額分は仮払いが認められたが、賞与及び諸手当については否定されている。
(2) 派遣先と派遣元との契約が解約された場合、派遣先で当該業務を担当していた派遣労働者を派遣元が解雇することができるかという問題は従来から争われてきた問題であり、かつては派遣先企業と派遣労働者との間に直接的な雇用関係が黙示的に存在するとして、解雇を無効とする考え方もみられた(肯定した判例としてサガテレビ事件・佐賀地判昭55・9・5労判三五二号六二頁など、否定した判例として同控訴福岡高判昭58・6・7労判四一○号二九頁などがある)。しかしその後、労働者派遣事業法が制定され、雇用と使用とが切り離された関係が広く認められるようになると、派遣労働者と派遣先企業との間に直接的な雇用関係があるとみることができるのは、かなり特別な場合に限られるとの理解が一般的になってきている。
このため本件においても、派遣元の企業との雇用関係を前提として解雇の有効性が論じられている。すなわち、業務請負契約の解約によって生じた、派遣元企業における業務の縮小による整理解雇としてこの事案を捉え、派遣元企業でいわゆる整理解雇の四要件が満たされているかが判断されているところに本決定の特色がある。
(3) 整理解雇が有効であるためには、解雇の必要性があること、解雇回避努力が尽くされたこと、被解雇者の選定基準の作成と合理性、労働者への十分な協議ないし説明を行うことが求められ、これらを総合して判断されるというのが裁判所の基本的な態度であり、このような判例の流れはほぼ確立したものとなっている。
本決定では、業務請負契約の解約により八名の運転手を余剰人員として抱えねばならなくなったことに経営上の困難が認められるとして、解雇の必要性については認めたものの、希望退職者の募集がなされなかったこと、被解雇者と残留者との区別の説明がつかず選定基準が明らかでないこと、本件解雇予告がなされる三カ月前の解雇予定者リス卜が作成された時点で説明がなされるべきであったのに被解雇者への説明がなされなかったことから、本件解雇は整理解雇の要件を充足していないとして解雇無効としたものである。
なお、整理解雇の必要性以外の要件が満たされていないことを理由に解雇を無効とした最近の判例としては、株式会社よしとよ事件(京都地判平8・2・27労判七一三号八六頁)や丸子警報器(雇止め)事件 長野地上田支決平8・6・6労判六九七号三七頁)がある。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>