フォード自動車事件


フォード自動車事件
東京高等裁判所判決 昭和59年3月30日
労働判例437号41頁

控訴人は、昭和五一年九月一三日、試用期間九〇日の約束で被控訴人の人事部長として雇用され、五二年一月一四日、試用期間の満了とともに、被控訴人の「パーマネント・エンプロイー」となった者である。
被控訴人会社は、控訴人の業務の実績は、同社の組織上社長に次ぐ最上級管理職四名のうちの一名である人事本部長の地位にある者としては積極性を欠き、能率が極めて悪い等同社において同人を右の地位において引き続き勤務せしめることが不適当と認められ、その結果、このまま雇用を継続することができない業務上の事情が存在するのであるから、就業規則三二条一項(ト)(業務の履行又は能率が極めて悪く、引き続き勤務が不適当と認められる場合)および(リ)(雇用を終結しなければならないやむを得ない業務上の事情がある場合)に該当するとして、五二年七月二八日、間年八月末日をもって控訴人を解雇する旨の意思表示をなした。
これに対し、控訴人(一審原告)が、右解雇の効力を争って、控訴人・被控訴人(一審被告)間に雇用契約関係が存在し、控訴人が被控訴人の人事本部長としての地位を有することの確認と、賃金の支払いを求めたところ、一審は、布雇用契約は「人事本部長」という地位を特定した契約であると認定・判断したうえで、控訴人の人事本部長としての勤務実態の認定に基づいて、本件解雇を有効とした(東京地判昭57・2・25労判三八二)が、本判決も、本審における予備的請求も含めて、控訴人の請求を棄却した(もっとも、賃金支払請求については一部認容)。
(1) 本件の最大の論点の一つは、本件雇用契約が「人事本部長」という地位を特定したものか否かという点であるが、本判決はこれについて一審判決に従う。本件事実関係を前提とすれば、妥当なものといえようか。
(2) 契約上、職種、地位等が特定されている場合、労働者の同意なくして使用者はそれを変更する配転命令はなし得ないとする点は、学説・判例ともに一致している。これを反対解釈すれば、右の場合、使用者は右特定の範囲を超える配転義務は負わないことになろう。ただ、事は解雇にかかわるだけに、一般の従業員たる地位に格下げして雇用契約関係を維持することをせず、解雇に及ぶことが権利濫用になりはしないかの問題が生ずる可能性もある(控訴人の予備的主張とは趣旨を異にするようではあるが)。本件の場合、本件雇用関係が「人事本部長」ということのみを前提としているとすれば、右が結論に影響を与える可能性は少ないとも考えられる。ともあれ、本件判断は本件事案の特殊性に大きく関連したものとみるべきであろう。

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