宝塚映像事件


宝塚映像事件

仙台地方裁判所決定 昭和63年7月1日

労働判例526号38頁

(1)本件は、造船会社解散に伴う解雇に関し、被解雇者らが、右会社解散後、その業務の一部(船舶の修繕、鉄構業等)を受けつぐ形で新会社が設立されており、右解散は偽装解散というべきであるから、右解雇は整理解雇というべきところ、右整理解雇は権利濫用として無効であると主張して、解散会社従業員たる地位の保全を求めたものであるが、本決定は右請求を却下した。

(2)企業解散に伴う解雇について、判例は、それが真実のものである限り、「営業の自由」を根拠に、その効力を直ちに肯定する傾向に傾く(例えば、三協紙器事件東京地決昭36・11・17労民集一二-六岸本洋服店事件名古屋地決昭52・7・15労判二八三、全教図・全国教育図書事件東京地決昭56・4・15カード三六一、労経速一〇八六等)。
 他方、近時、解散の効力といった点は問題とせず、解雇の効力のみを問題とする系譜も目立ってきている(例えば、そのうえで、協約違反を理由に解雇無効を判示するものとして、飛鳥車輛工業事件奈良地判昭49・4・8カード19八、大阪高判昭50・4・30カード二二七、大鵬産業事件大阪地判昭55・3・26労判三四〇、大照金属事件大阪地判昭55・11・7労判三五二等)。
 右後者の立場に立った場合、会社解散の場合の解雇についても整理解雇としてのいわゆる四要件を満たすべきものとされるかは定かではないが、いずれもが解雇同意条項違反を理由に当該解雇を無効としていることからすると、その可能性はあり得るものと思われ、そうである限りは、本件について、本決定とは異なったアプローチの仕方も考えられないではない。もっとも、本決定認定のごとく、本件解散がやむを得ないものであるとすると、結論に差の生じる可能性はきわめて少ないとは思われる。

(3)ただ、本件の特色は、新会社が設立されている点にある。しかも、右新会社は「債務者会社の修繕船部門、陸上鉄構部門の土地設備や営業権の譲渡を受け、これを主たる事業目的として設立された会社であったため、当然のことながら、本店所在地が債務者会社のそれと同一であるし、その営業目的も、新造船部門が除外されているだけで債務者会社と殆ど変らず、取引先もほぼ同じであり、営業活動の場もまた同一であって、従業員も全て債務者会社の元従業員によって占められている。」というのである。
 このことから、本件会社解散が偽装解散であるか、新会社が債務者会社と法的同一性をもつか等はともかくとしても、本件解雇を実質的にみれば、会社解散→新会社での不採用→解雇という形で現象しているのであり、また、新会社での採用は債務者会社作成の斡旋名簿に基づいてなされたというのであるから、一事業部門の廃止に伴う整理解雇と同質であると解することも不可能ではないように思われる。
 とするならば、右見解を肯定するかどうかはともかくとして、新会社への従業員の移行がどのように行なわれたのか、債権者らが新会社で採用されなかったのは何故か、右の点について債務者会社に責任の契機は存しなかったのか等について十分な認定、検討をしたうえで結論に至ってもよかったように思われる。これらの意味で、債権者側主張の枠組にも関連していることとはいえるが、本件を単純に会社解散に伴う解雇としてのみとらえて、立論することには疑問の残るところである。
(4)もっとも、確定的な認定がないので断定はできないが、債権者らは新会社への移行には反対していたようであり、したがって、そこでの採用への応募はしていなかったと推測されるから、造船部門の廃止がやむを得ず、それに伴う解雇もやむを得なかったとするならば、本件解雇を整理解雇とみるにしても、その効力が肯定される余地は大きいとも思われる。その意味では、結局、本件の最大の論点は右の二点についての評価いかんに帰するともいえよう。

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