平野金属事件


平野金属事件

大阪地裁決定 1976年7月20日

労働判例261号50頁

いわゆる整理解雇は、労働者の責めに帰すことのできない事由によって、一方的に労働者の継続的雇用への期待を断ち切り、生活の基盤を破壊するものであるから、使用者に整理解雇を許容しなければならない場合があるとしても、その解雇権を無限定的なものと解することは正しくない。企業が倒産してしまってやむなくその従業員を解雇する場合はともかく、本件事案のように、解雇という従業員の犠性の上に企業の存続をはかる場合にあっては、企業が十全の努力を尽したにもかかわらず、誰かを解雇するのでなければ近い将来企業も他の労働者も共倒れになることが予見される事態に立ち至り、解雇に際してその人選が公平かつ合理的になされたということがあってはじめて解雇される労働者の側からもやむを得ないものと是認される契機がある(したがって、社会的相当性を持ちうる)というべく、こうした要件を充たさぬ解雇は信義則違反ないし権利濫用として無効と解すべきである。また、解雇に際してその必要性なり人選の基準等について労働者側の納得を得るための努力を怠ったような場合は、信義則違反として同じく無効と評価すべきであろう。
 (中 略)
 以上に考察してきたところを総合すると、会社が十全の努力を傾けてもなお企業維持のため申請人らを解雇する必要性があったといえるかは甚だ疑問といわなければならない。
 (中 略)
 人員整理が希望退職者の募集段階からすゝんで整理解雇に発展するに際しては信義則上その解雇基準を明示して意向を聴取し、組合及び組合員の納得を得るために必要な手続を踏むべきである。反対の結論が予見されるからといって、当然そのような手続は省略してよいことにならないし、それ以前に詳細に行った会社の営業実態に関する説明なるものが必ずしも客観的合理的なものとして組合が納得していない以上前に説明したというだけでは事足らない。
 (中 略)
 会社がそれ程の緊急性もないのにこれらの手続を省略して内部決定のあった翌日慌しく解雇を通告したことは、信義則違反と評価されてもしかたがないであろう。
 (中 略)
 まず会社がとったような成績だけを選定基準とすることが妥当かはかなり問題である。けだし、整理解雇という事柄の性質上企業に対する現在の寄与度を重視することも理由のあることではあるが、従業員の立場からすれば、勤続年数(企業に対する貢献度)、現在の生活情況、再就職の可能性等は当然顧慮されるべき要素だということになるのみならず、勤怠状況を無視して会社に対する有用度が果して判定できるのかといった疑問が残る。
 選定基準の設定に関する点を暫く置くとしても、本件申請人らの選定方法は、客観性、合理性に乏しいといわなければならない。
 (中 略)
 以上の考察を総合すると、本件解雇はその余の点について判断するまでもなく信義則違反又は権利濫用として無効と解するのが相当である。

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