旭川大学事件


旭川大学事件

札幌高等裁判所判決 平成13年1月31日

労働判例801号13頁

(1) 事件の概要 本件は,被控訴人Yの設置・運営する私立大学において昭和59年度から期間1年の労働契約を更新して外国人語学教員として勤務してきた控訴人Xが雇止めの通知を受けたことに対して,その無効を主張し,その無効確認を求めた事案の控訴審判決である。
 Xは,外国人教員招聘規定に基づいて,雇用期間1年の労働契約を6回にわたって更新し,次いで平成3年4月,「特別任用職員の任用並びに給与等に関する規定」の施行に伴い,雇用期間1年間,勤務年限5年間の内容で,新たな身分である特別任用職員(特任教員)として勤務する旨の労働契約を締結し,4回にわたって期間の定めのある労働契約を更新した。Yは,平成8年3月末日をもって勤務年限が満了することから,Xに対し,労働契約を更新しない旨を通知し雇止めを行った。
 これに対してXは,同年4月,旭川地裁に,地位保全等の仮処分を申し立て,また同年10月には同地裁に労働契約上の地位の確認を求める訴えを提起した。同地裁は同年12月,Xの申立てをほぼ認める決定をし,確認訴訟については職権による和解を勧告し,雇用期間は8年4月1日から9年3月31日までとする,勤務年限の合意を2年間とし更新可能回数を1回とすること等を内容とした和解が成立した。
 Yは,この和解に沿って9年9月,Xに対して10年4月1日以降新たな労働契約を締結しない旨を通知し,再度雇止めを行った。これに対しXは解雇無効の確認を求める訴えを旭川地裁に提起した。
(2) 一審の判断 一審判決では,本件労働契約が期間の定めのない労働契約に転化し,またはこれと同視されるべき状態になっていたということはできないと判断したうえで,本件雇止めには「社会通念上相当とされる客観的合理的理由」があるものと解するのが相当であり,権利濫用あるいは信義則違反として無効となるものとはいえないとしてXの訴えを棄却した。
 これに対しXは,原判決がYの主張する語学教育改革の必要性を過大に評価し,語学教育改革とXの雇止めとの合理的関連性の検討を怠り,雇止めによるXの不利益を一切検討せず,無批判にXの雇止めを日定しており,「社会通念上必要とされる客観的合理性」の解釈を誤っているとして,札幌高裁に控訴した。
 一方,Yは,Xの雇用継続に関する合理的期待は認められないとし,仮に,本件雇止めに社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要とされるとしても,社会通念上相当とされる客観的合理的理由は認められると主張した。
(3) 判断のポイント 本控訴審判決は,XとYとの間の労働契約は,実質的に,当事者双方とも,期間は定められているが,格別の意思表示がなければ当然に更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認めることは到底できず,期間の定めのない労働契約に転化した,あるいは,本件雇止めの効力の判断に当たって,解雇に関する法理を類推すべきであると解することはできないと判断した。そして,XとYの問の労働契約は,平成10年3月31日の期間の経過をもって,終了したと認めるのが相当であるとした。
 また,社会通念上相当とされる客観的合理的理由について本判決は,①期間1年間とする教員と期間の定めのない専任教員とでは,必要とされる客観的合理的な理由やその程度は当然異なる,②被控訴人大学における語学教育改革の必要性は肯定でき,その財政状況から一般外国語講義を特任教員ではなく非常勤教員に担当させることとした大学の判断を不当とはいえない,③1年間という期間を定めた労働契約の性質上,被控訴人大学の相当な経営上の都合を理由にする雇止めもやむを得ないとし,本件雇止めを有効と認めるべき社会通念上相当な客観的合理的理由があるから,権利濫用ないし信義則違反とは認められないと判断して,原判決相当・控訴棄却とした。
 なお,控訴人主張の整理解雇の4要件呉備の必要性については,1年間との期間を定めた特任教員の雇用契約の雇止めの効力の判断が問題とされる本件は,それを必要とする事例とは事案を異にするとし,また代替案の提案もなかったとする主張についても,YはXを非常勤教員として採用することを拒否するものではなかったとしたうえで,特任教員としての雇用継続ができない理由があるときに,雇用条件の異なる専任教員として採用する法的義務を認める理由もないと判断している。
(4) 参考判断 これまでの雇止めに関する裁判例では,諸事情を総合勘案し雇用継続に対する期待が首肖できるような状況では雇止めに合理的な理由が必要とされてきた(新潟労災病院事件・新潟地高田支決平6.8.9労判659号51頁,中部交通事件・名古屋地決平8.2.1労経速1681号16頁)が,臨時性が比較的明白で雇用継続に対する期待が支持されない事例では,期間満了による契約終了が肯定された(鉄道整備事件・東京地決昭52.12.21判時892号103頁,丸島アクアシステム事件・大阪高決平9.12.16労判729号18頁)。なお,最近の外国人教員の雇止めに関する判例には,学校法人静岡理工科大学事件(静岡地浜松支判平9.4.16労判729号90頁),筑波大学(外国人教師)事件(東京地判平11.5.25労判776号69頁)がある。

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