ロイター・ジャパン事件


ロイター・ジャパン事件

東京地方裁判所判決 平成11年1月29日

労働判例760号54頁

(1)被告Yは、国際的な通信社の日本における会社であり、報道情報通信を業務としている。Yは、平成六年春からの株式情報に関する新規サービスの開始に向けて、トランスレ-夕ー(翻訳担当記者)七名程度、レポーター(証券担当記者)一〇名程度を新規に採用するため、新聞に募集広告を掲載した。原告×は右広告をみて応募し、筆記試験および面接を経て卜ランスレ-タ-に採用を決定され、雇用期間を一年とする通知書をもって契約社員として平成六年一月一日付でYに入社した。
 なおYは、平成六年一一月二一日付けで、×に対して期間一年の雇用契約が同年一二月三一日をもって終了することを確認する旨を通知した。
本件は、Xが、主位的に、Yの通知書は形式的なもで、実際は本件雇用契約は期間の定めのないものであり、雇用関係終了の通知は解雇に該当し、当該解雇には合理的理由がなく解雇権の濫用に当たるとしてその効力を争い、予備的に、仮に期限付きの労働契約であるとしても更新拒絶は信義則上許されないとして、労働契約上の地位を有することの確認を求めたものである。
(2)主位的請求につき、判決は、人事に関する権限のない者による契約更新や正社員採用の可能性に関する発言は期限の定めのない雇用契約締結の根拠とはならない、また雇用契約は使用者と労働者の間で個別的に締結されるものであり、正社員募集として行われた募集広告自体は契約の申込みではなく、これも期間の定めのない雇用契約締結の根拠とはならないとし、むしろYは、期限付き雇用契約を締結する意思で右通知書を作成日、期間の定めを形式的なものとする認識はなく、×も自分が期限付きの契約社員であることを認識していたとした。したがって、本件雇用契約は期限付きの契約であるとして、原告の主張は退けられた。
 予備的請求につき、判決は、期限付き雇用契約の更新拒絶等が信義則上許されないのは、労働者に契約更新を期待する合理的理由がある場合であることが判例上確立されており、当該合理性は、雇用契約時の状況、就業規則や待遇、契約更新の手続き等の事情を総合的に考慮して決定されるとしたうえで、まず、採用一年後に正社員になる可能性もあるというYの発言に対するXの期待は主観的にすぎず合理的理由がないとし、しかも契約社員と正社員とで扱いを異にしていたこと、後にこの従業員を除く契約社員三名が正社員に採用されたが、いずれも新たに期間の定めのない雇用契約を内容とする契約書を作成していたこと等からして、他の契約社員が正社員に採用されたことから直ちにかかる合理的理由があったというのは困難であるとした。
(3)判決は、Yが本件雇用契約締結の際に契約更新や正社員採用の可能性を老慮していたこと、および本件雇用契約が試用期間に類似するとの証言から、本件雇用契約が解約権留保付雇用契約類似の契約とみられる余地があるかどうか問題がないわけではないとしながらも、Xが引用する神戸弘陵学園事件(最三小判平2・6・5労判五六(20号七頁)とは事案を異にするとし、本件は、正社員として採用するというのは、契約終了、契約更新、正社員としての採用という三つの選択肢の一つにすぎす、本件雇用契約は、解約権留保付雇用契約類似とみることができる程度にまで正社員としての採用の期待をXに抱かせるものではなかったとした。したがって、契約更新等に対する原告の期待に合理的理由は認められないとして、原告の主張を退けた。
(4)本判快の特色は、期間の定めのある雇用契約の更新拒否について、権利濫用法理ではなく、信義則違反法理を用いた点にある(東芝柳町工場事件最一小判昭49・7・22労判一一〇六号「二七頁。日立メディコ事件・最一小判昭61・12・4労判四八六号六頁参照)。

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