丸島アクアシステム事件


丸島アクアシステム事件

大阪高等裁判所決定 平成9年12月16日

労働判例729号18頁

(1) 本件は、相手方(原審債務者)会社(以下会社)の嘱託社員であった抗告人(同債権者)Aが雇止めの無効を主張して、労働契約上の権利を有する地位の保全と賃金の仮払いを求めた事件の控訴審決定である。
 Aは、主としてダムなどの水利関係施設の製造を業とする会社の従業員(嘱託社員)であり、期間の定めのある雇用契約が締結されているほかは、その従事する業務や、残業・休日出勤も正社員と同一であった。Aの雇用契約は、六カ月の雇用期間が一〇回にわたり反復更新され、結局、平成四年三月から五年余り雇用されていた。会社は、平成七年九月頃からの一年半に、合計一三件の加工ミスをしたこと、平成八年に八回、翌年三月までに三回、「ポカ休(当日朝に電話などで連絡して休むこと)」をとったこと、あるいは会社の業績が悪化したことを理由として、雇用契約の雇止めを通告した。
 原審決定は、会社が、嘱託社員の雇用契約の期間満了に先立って、所属長が当該社員と面接したうえで、過去六力月間の出勤状況や所属部門長の総合所見を記載した「契約更新伺」という文書に基づいて、当該社員の契約更新の可否を審査し、これを決定する手続きをとってきたことから、嘱託社員の雇用契約更新が自動的に行われてきたものではないこと、Aには仕事上のミスや「ポカ休」も少なくないこと、会社の経営状況も芳しくないことを理由として、本件雇止めの効力を肯定した。
(2) これに対し、Aは本件抗告において、(1)本件雇止めまで一〇回の契約更新を受け、その勤務期間は五年に至っていること、(2)正社員と同様の恒常的業務に従事し、正社員と同様の賃金・一時金・昇給に関する待遇を受けてきたこと、あるいは(3)嘱託社員で六〇歳未満で雇止めされた者はほとんどいないこと等を理由として、本件抗告に及んだものである。
 これに対し、本決定は、期間の定めのある雇用契約の期間満了による雇止めの効力の判断にあたっては、当該労働者の従事する仕事の種類、内容、勤務の形態、採用に際しての雇用契約の期間等についての使用者側の説明、契約更新時の新契約締結の形式的手続きの有無、契約更新の回数、同様の地位にある他の労働者の継続雇用の有無などを考慮したうえで、期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在していたか、あるいは労働者が期間満了後の雇用の継続を期待することに合理性が認められる場合に解雇に関する法理を類推適用すべきであるとの基準を判示する。そして、本件においては、(1)会社が採用にあたり、長期雇用することを期待させるような言動をしていない、(2)嘱託社員の雇用更新にあたっては、実質的な審査によってその可否を決定していた、(3)Aの勤務成績・態度には問題があった、(4)仮に嘱託社員で六〇歳未満で雇止めされた者がほとんどいないとしても、そのことから、本件雇用契約が期間の定めのない雇用契約と実質的に変わらない状態にあったとか、期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があったとはいえないとして、Aの抗告を棄却した。
(3) 本件のような期間の定めのある雇用契約の更新拒否(雇止め)の効力については、本決定も引用する東芝柳町工場事件(最一小判昭49・7・22民集ニ八巻五号九ニ七頁、労判ニ〇六号ニ七頁)、日立メディコ事件(最一小判昭61・12・4労判四八六号六頁)、あるいは進学ゼミナール予備校事件(最三小判平3・6・18労判五九〇号六頁)などの最高裁判決が存する。

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