東芝柳町工場事件


東芝柳町工場事件

最高裁判所第1小法廷判決 昭和49年7月22日

判例タイムズ312号151頁

いわゆる臨時工には、純粋の臨時工あるいは季節労務者、試用工という名の臨時工等、さまざまの形態があるが、社会的、法的に特に問題の対象となるのは、常傭工雇傭の非弾力性を景気調節弁としてのそれによつて補なおうとすること、賃金その他の労働条件を本工と差別して賃金コストを低くしようとすること等を目的として採用された臨時工であつて、短期労働契約の反覆更新により相当長期間にわたつて継続雇傭され、その作業内容においても本工とほとんど変らない実態を備えているものである。
 この種の臨時工については、労働法的にはいろいろな問題があるが、本件での問題は、右のような臨時工の反覆更新後の労働契約について契約期間の定めをどのようにみるか、傭止めの法的性質をどのようにみるか、である。
この点について、下級審裁判例は、(一) それは依然として期間の定めのある契約であり、傭止めは更新拒否であつて、契約は期間の満了によって終了する、とするもの(名古屋地決昭36・2・22労民集12・1・92、大阪地判昭38・7・19労民集14・4・932、神戸地判昭39・1・29労民集15・1・26、長崎地判昭39・6・12労民集15・3・638、東京高判昭43・3・1高民集21・3・215、東京地判昭44・8・19判例時報589・80等)と、(二)期間の定めのある短期労働契約が反覆更新されたことにより期間の定めのない労働契約に転化したとし、傭止めは解雇であるとするもの(横浜地川崎支判昭45・9・22別冊労働法律旬報751・14宮崎地判昭45・11・16別冊労働法律旬報761・14等)とに分れる(一)の見解は、期間の定めのある労働契約が反覆更新されたからといつて、期間の定めのない労働契約に変化するという法的根拠は見出しがたいとするものであろう。
もっとも、こうした見解に立ちつつ、諸般の事情から、雇傭契約が反覆更新され、被傭者において期間満了後も使用者が雇傭を継続すべきものと期待することに合理性が認められる場合には、傭止めを実質上解雇と同視すべく、このような場合には解雇に関する諸法則の類推等により、労働者を保護すべきである、とするものもある(長崎地判昭39・6・12労民集15・3・638、神戸地判昭42・7・5判例時報507・72、東京地判昭44・8・19判例時報589・80等)。
なお、右のような労働契約における期間の定めは、脱法行為である等の理由で、無効であるとし、傭止めは解雇であるとす見解もある(本多淳亮「臨時工の解雇について」大阪市立大学法学雑誌4・3~4・294等)。
 本件各労働契約締結及びその当時のY会社における臨時工雇傭の実状は、原判決の認定事実として本判決理由中に要約されている。
第一審横浜地判昭43・8・19労民集19・4・1033(評釈、宮本安美・法学研究42・8・103)は、本件各労働契約が反覆更新されXらが「引続き雇傭されてきた実質(いわゆる連鎖労働契約の成立)に鑑みれば、殊に会社の設備拡張、生産力増強に伴う緊急の労働力需要に基く過剰誘引とその利用関係の維持に由来することからしても、漸次その臨時性を失い本件各傭止めの当時にはすでに存続期間の定めのない労働契約(本工契約ではない。)に転移したものと解するのが相当であ」り、本件傭止めは法律上解雇の意思表示とみるべきであるとした。
原審東京高判昭45・9・30(評釈、阿久沢亀夫・判例評論144・33、横井芳弘・ジュリスト482・188、楢崎二郎・労働判例百選〈3版〉79)は、「本件各労働契約は、契約当初及びその後しばしば形式的に取交された契約書に記載された2か月の期間の満了する毎に終了することはなく、当然更新を重ねて、恰も期間の定なき契約と実質的に異らない状態で存続していた」ものであり、傭止めの意思表示は「実質上臨就規にいわゆる解雇の意思表示にあたる」とした。
本判決は、右原審の判断を是認したものであるが、なお、契約期間の満了を解雇事由として掲げる臨就規8条3号につき、これに該当することを理由として傭止めをすることができる場合について説示している。
 判旨のような問題点につき判断を示した最高裁判所の先例は見当らない。
本判決は、本件の具体的事実関係のもとで、解雇の法理を類推すべきものとした原審の判断を是認したにとどまるので、具体的の場合にどの範囲で同様の解決をえられることになるかは、今後に残された問題である。

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