ソニー生命保険事件


ソニー生命保険事件

東京地方裁判所判決 平成11年3月26日

労働判例771号77頁

(1)原告は、生命保険契約の締結の媒介、保険料の集金を業務とするライフプランナー(営業担当社員)として被告会社(以下、被告)に雇用されていたが、平成九年一二月一〇日付けで懲戒解雇された(以下、本件解雇)。
 原告は、被告から貸与されていたパソコンを三回にわたり質入れし、それが質流れで販売されていたが、原告は紛失したとして、警察にも虚偽の紛失届を提出していた。右パソコンは、被告からライフプランナーに貸与されるもので、被告の設計したシステムにより、保険設計書などを作成して顧客に提示するように指導されており、このためパソコンには顧客情報が入力されているほか、後に、パソコンは被告本社とオンラインで結ばれ、被告本社のホス卜コンピューターからすべての顧客情報の入手が可能となり、また電子メールによって、会社からの情報などがパソコンに送られるようになっていた。しかし原告は、パソコンを質入れしたため、これを利用せず、顧客に対する保険契約書は、被告の事務所に設置されているコンピューターを使用して作成したため、電子メールによって本社から送られてくる指示や情報を見ることはできなくなっていた。
 被告は、原告の右行為が被告就業規則の定める懲戒事由である「会社の金品等を費消又は流用したとき」に該当するとして、原告を懲戒解雇した。これに対し原告は、(1)パソコンの質入れによって得た金額が合計八万五千円と低額であること、(2)質入れは同僚のパソコンを質出しするためになされたこと、(3)パソコン内蔵のデータについては、暗証番号を設定するなど、セキュリティが施されており、外部に情報が流出する危険性が皆無であることなどを理由として、本件懲戒解雇が解雇権の濫用に当たるとして、右懲戒解雇処分を取り消して解職処分とすることと、退職金および一か月分の給料相当額の支払いを求めたのが本件である。
(2)本判決は、(1)被告のライフプランナーとして、顧客から保険料などの金銭を預かることも業務に含まれ、金銭に潔癖性が要求されること、(2)質入れにより、原告はパソコンを使用できず、業務に支障がないとはいえないこと、
(3)貸与されたパソコンには、被告の機密情報や開発したシステムがインス卜ールされており、それらが外部に漏洩されれば被告の損害は計り知れないところ、セキュリィテイも完全ではないことから、被告の機密情報などが外部に漏洩される危険性があったことから、原告の行為は懲戒解雇に該当すると判断している。
 なお、本件は、訴訟代理人弁護士を付さない本人訴訟であるためか、原告の主張は定かではないが、原告は、退職金が支給されない懲戒解雇には該当しないが、普通解雇としての効力を承認したうえで退職金の支払いを請求しているようである。
 しかし本判決は、懲戒解雇の効力を肯定し、退職金を支給しないという被告就業規則の規定により、原告の退職金請求を棄却している。さらに原告は、本件解雇以前に締結した保険契約に関しては、解雇された翌月以降の給与(報酬ないし手数料)を請求する権利を有するとして、その支払いを請求したが、本判決は、ライフプランナーが職を離れた以降は、この規程に定められた報酬について如何なる権利をも有しないと規定する被告就業規則により、右請求権を有しないと判断している。

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