ゾンネボード製薬事件


ゾンネボード製薬事件
東京地方裁判所八王子支部決定 平成5年2月18日
労働判例627号10頁

(1) 本件は、薬品の製造会社および販売会社の両グループ企業の業績悪化に対し、経営合理化のため宣伝部門の廃止を決定し、これを理由として宣伝業務を担当していた、あるいはかつて担当していた取締役や部長らを含め、両社を通じて一一名の解任ないし解雇を行い(第一次解雇)、右第一次解雇によって解雇された製薬会社の二名および薬品会社の三名が地位保全等の仮処分を申請し、これが認められたのに対し、両会社は被解雇者の復職は不可能であり、解雇は不可避であるとして、、改めて右五名に解雇を通知(第二次解雇)するとともに右仮処分命令に異議を申し立てたものである。裁判所は、第一次解雇および第二次解雇につき仮処分命令は正当であるとして、異議申立てを認めなかった。
(2) 企業の業績悪化に際し合理化を目的になされるいわゆる整理解雇については、大村野上事件(長崎地大村支判昭50・12・24労判二四二)以降の下級審判決の集積によって、(1)整理解雇の必要性があること、(2)解雇回避の努力が尽くされたこと、(3)整理解雇の対象者の選定基準が客観的・合理的なものであること、(4)労働者との協議・説明が尽くされたことが、整理解雇を社会的に相当なものとして有効と認められる要件とされてきた。裁判所の事実認定によれば、第一次解雇および第二次解雇がなされた当時においてこれらの要件はいずれも満たされておらず、本件整理解雇は社会通念上是認することができず無効であるとしている。
 なお、本決定では、要件(1)に対する、要件(2)~(4)の位置づけについて、第一次解雇および第二次解雇のいずれも解雇当時にも早急に解雇を行わなければ会社の維持存続が危ぶまれるという程度に深刻な経営危機に直面していたとはいい難いとしたうえで、緊急の必要性を満たしていない場合でも整理解雇は直ちに無効とはいえないが、深刻な経営危機に直面した場合の整理解雇に比較して、解雇をやむを得ないといえるだけの事情が存在するか、要件(2)~(4)はより慎重に吟味されるべきであるとしている。
(3) このような整理解雇の法理が、いかなる労働者について適用されるかについては、最近では経営不振を理由とするパートタイム労働者の雇止めにつき、整理解雇の法理である解雇回避努力が尽くされていないとして無効との判断を示した三洋電機(池田ほか)事件・三洋電機(松井)事件(大阪地決平2・2・20労判五五八)、三洋電機平3・10・22労判五九五)が注目された。本件の場合、従業員数がさほど多いとは言えないにしろ、地位保全等の仮処分を申し立てたのは一名を除き役職的には取締役、部長、副部長、取締役兼務の工場長の管理職者であって、これらの者に対して整理解雇の法理の適用がなされていることが注目されよう。従業員兼務の取締役について、これまでも従業員としての性格をどのように判断するかは企業内における実質的な位置づけから判断されてきたが地判平3・12・17労判六〇二)、本件においても取締役が行っていた職務内容や経営全般に関する意思決定へのかかわりの程度などを評価して、その労働者性を認めている。

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