ロイヤル・インシュランス・パブリック・カンパニー・リミテッド事件


ロイヤル・インシュランス・パブリック・カンパニー・リミテッド事件
東京地方裁判所決定 東京地方裁判所決定
労働判例712号85頁

(1) 本件は、債権者ら(部長職)が、いわゆるリストラとして組織の新体制ヘの移行の際に管理職を解かれ、その前後には退職勧奨を受けていたがこれに応じなかったため、平成八年三月に債務者より解雇の意思表示を受けたもの(本件解雇)である。
(2) 本件の争点は、本件解雇の有効性ないし正当性であり、債務者の就業規則の「会社経営上やむを得ないと判断し、労働組合がそれを了承したとき」という規定に基づく解雇手続における債務者の、従業員組合の了承の存否が焦点となった。
(3) 本件決定は、本件債権者らは平成七年一一月に部長職を解かれ、管理職としての地位を喪失して一般の従業員と全く同等の法的地位を有するに至っており、債権者らの解雇にあたっては、右規定に基づき組合の「了承」が必要であると判断し、了承があったことの疎明がなされていない本件解雇は無効であると判断した。
 なお、本件決定は、債務者が本件解雇が整理解雇である旨を主張(予備的主張)していることに対して、「整理解雇の法的本質は、普通解雇であり、ただ、それが会社の倒産とか特定の非採算部門の整理その他の特殊な事情ないし状況の下になされる解雇であることから、その解雇の正当性の判断あるいは解雇権濫用の判断等において、その判断要素として、通常の解雇の判断に一般に必要とされる諸事情に付加して、整理解雇に特有の諸事情を総合考慮しなければならなくなることがあり得るに過ぎず、まして、法律上、整理解雇が独立した解雇事由となることはないし、また、整理解雇に固有の法律要件が確定的なものとして存在するわけではない(いわゆる整理解雇における整理解雇の必要性とか解雇避止義務の履行等の諸事情は、そのような意味での付加的な事情の一つであると解するべきであり、整理解雇の主張がある場合において、それらの事情のすべてを常に判断対象とすべき論理的な必然性は全くなく、事案によって、判断に必要な要素が異なるのは当然である。)。」としたうえで、本件では、就業規則による解雇制限がある以上、「退職および解雇規程」に定める手続要件を履践することが不可能であるか、右手続要件の履践を求めることが却って債権者らにとって酷な結果を招来してしまうというような極めて特殊な事情が存在するなど特段の事惰がない限り、同規程に定める手続要件を充足する必要があり、右手続要件としての従業員組合の了承があったことの疎明がないから、解雇手続違反の本件解雇は無効と判断した。
(4) 就業規則、労働協約等に定められた解雇手続に違反する解雇の効力についての裁判例は少なくない。
 判例としては、西日本短期大学(福岡地決平4・9・9労判六一六号七三頁)、三井リース事業事件(東京地決平6・11・10労経速一五五〇号)などがある。
 また、本件決定が、「整理解雇の法的本質は、普通解雇であ」り、「法律上、整理解雇が独立した解雇事由となることはない」し、「整理解雇に固有の法律要件が確定的なものとして存在するわけではない」としていわゆる整理解雇の四要件を「整理解雇の主張がある場合において、それらの事情のすべてを常に判断対象とすべき論理的な必然性は全くなく、事案によって、判断に必要な要素が異なる」としているのは、本件債務者の予備的主張(整理解雇)に対する判断として注目される。整理解雇に関する裁判例としては東洋酸素事件(東京高判昭54・10・29労判三三〇号七一員)あさひ保育園事件(最一小判昭58・10・27労判四二七号六三頁)などがある。
 ところで、近年、外資系企業におけるドラスティックなリス卜ラに関する裁判例が増えており、管理職の降格に関するバンク オブ アメリカ イリノイ事件(東京地判平7・12・4労判六八五号一七頁)、変更解約告知は関するスカンジナビア航空事件(東京地決平7・4・13労判六七五号一三頁)、賃金の一方的引き下げについてのチェースマンハッタン銀行事件(東京地判平6・9・14労判六五六号一七頁)などが注目されている。

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