神田運送事件


神田運送事件
東京地方裁判所決定 昭和50年9月11日
労働判例236号36頁
一 懲戒処分として解雇事件の中でも例が多い、(1)不当労働行為問題では、処分事由と不当労働行為性の競合が、(2)配転拒否の事案では業務上の必要性と本人のこうむる不利益が、そして本件のように、(3)職務上の適格性が問題にされる解雇については、職場秩序の維持とその適格性が結論をわかつ傾向が、裁判例の上でも定着してきた感がある。
 本件は、就業規則で定める処分事由に該当する事実はあったが、会社側が強く社内における暴力行為禁止を呼びかけ、従業員全員にその徹底化を図ってきたと主張しているものの、申請人その他の従業員の従前の言動について、はたしてその都度適切な措置をとってきたか否かが、そしてまた申請人の所為が就業規則の適用上妥当であったか否かが、問題となった事案である。
二 本件のように、就業規則の中の制裁処分としての諭旨解雇が示されている場合には、いわゆる通常解雇ではなく懲戒処分と見るほうがすなおであるから、原則として権利濫用論を借用する必要はなく、(1)あらかじめ解雇事由を定めておくことと、(2)処分の選択についての妥当性の両方が要求されるのが通常といえ、本件の場合これを見ると、権利濫用論には触れず、(1)の点には該当するが、(2)の点において不当だとした決定理由は、すなおに首肯されるところであろう。
三 次に、職場秩序の維持を強調しながら事件の都度適切な措置を講じたかどうかの点について、日本エヌ・シー・アール事件(東京判昭49・11・26労働経済判例速報八六号)で、無断欠勤・上司の指示に対する違反・職場の同僚に対して悪影響を及ぼす発言及び常軌を逸した行為がたびたびあり、改善を誓約する念書まで差し入れながら、さらに同様の事実を繰り返した申請人が、「勤務成績が悪く向上の見込がないと認められたとき」および「社員としての適格性に欠けるに至り、改善の見込がないと認められたとき」に該当するとして普通解雇され、仮処分裁判所もまた右解雇を相当と認定したのと対比して、本件決定の採った結論は容易に理解されよう。
 と同時に、会社側にとっては、業務管理について厳格性というより、その適格性について問題を提起した裁判例として参考に値するのではなかろうか。

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