東京海上火災事件


東京海上火災事件
東京地方裁判所判決 平成12年7月28日
労働判例797号65頁

(1) 事件の概要 原告Xは,昭和62年4月に被告損害保険会社Yに総合職従業員として採用され,コンピューターシステムの開発および保守に関する業務等に従事していた。
 Xは通勤途上の負傷や私傷病等を理由に,平成4年11月以降4回の長期欠勤(4か月間,5か月間,1年間,6か月間)をはじめ約5年5か月のうち約2年4か月を欠勤し,また最後の長期欠勤の前2年間の出社日数のうち約4割が遅刻であったなど遅刻を常習的に繰り返していた。
 そこでYは,Xの所定労働日における大半の欠務,甚だしく多い遅刻・離席,また業務意欲・知識・能力の著しい低さがYの業務に多大の支障を与えていたものであり,労働協約および就業規則に規定される普通解雇事由「労働能率が甚だしく低く,会社の事務能率上支障があると認められ乞とき」に該当するとして,平成10年4月8日付てXを解雇した。
 これに対してXは,労働能率は労働者が労働義務を負っている時間で判断され,会社の許可を得た欠勤や有給休暇は能率の低さの理由とはならず,また遅刻はすべて正当な理由に基づくものであり,勤務実績の不良も事実に反するとして,普通解雇事由は存在せず本件解雇は解雇権の濫用に当たると主張し,Yに対して従業員としての地位の確認および賃金の支払いを求めた。
 本件の争点は,第1に普通解雇事由の存否,第2に本件解雇の有効性である。
(2) 判断のポイント 第1の争点につき,本判決は,Xには4回の長期欠勤を含め傷病欠勤が非常に多く,また出勤しても遅刻や離席が多く,出勤時の勤務実績についても,担当作業を指示どおりに遂行できず他の従業員が肩代わりをしたり後始末のため時間を割くなど劣悪なものであり,Xの労働能率は甚だしく低くYの業務に支障を与えたことが認められるとして,普通解雇事由に該当するとした。
 また本判決は,「労働能率」の判断について,傷病欠勤の期間を除外すべき旨のXの主張に対し,Xは長期にわたりコンスタントに労務を提供することを期待される総合職従業員として期限を定めず雇用されたものであり,このような雇用契約関係下で,Xが労務を長期にわたり提供できないことを労働者の適格性判断の材料にできないとすることは不合理であり,傷病欠勤期間を労働能率判断から除外する理由はないとした。
 第2の争点につき,本判決は,Xの勤務実績・勤務態度は上司らの指導によっても変わらず,労務提供の意欲がみられなかったものであるから,解雇の判断には客観的に合理的な理由があったとして,解雇権の濫用に当たらず有効なものであるとした。  (一部仮名,当事者の「主張」欄省略)

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